宮田登の妖怪論 まとめ

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妖怪研究者としての宮田登

 宮田登は民俗学者として知られていますが、その出身は日本史です。そのため、近現代の庶民生活文化に加え、近世の江戸の町民たちの信仰生活に関する知識が豊富な研究者です。

 民俗学者としての彼の有名な著作は『ミロク信仰の研究 日本における伝統的メシア観』や『江戸のはやり神』などがあげられるでしょう。民俗学を志すものならば、もしかしたら『はじめての民俗学 怖さはどこからくるのか』なども読んでいる方もいるかもしれません。

 数多くの著作を出している宮田登ですが、彼の妖怪論をまとめた本として有名なのが、『妖怪の民俗学』『都市空間の怪異』です。今回はこれらの本を参考に宮田登の妖怪論についてまとめていきたいと思います。

 さて、彼の妖怪論のキーワードとなるのは「幽霊の妖怪化」「妖怪の音声」そして「都市の怪異」です。

宮田登の妖怪論

「幽霊の妖怪化」

 柳田國男は妖怪と幽霊を分ける立場をとっている。『妖怪の民俗学』で宮田は以下のようにまとめている。

〈妖怪と幽霊の民俗学的な整理 by柳田國男〉

①妖怪:出現する場所が決まっている
 幽霊:恨みや怨念などの一定の意志をもって向こうからやってくる

②妖怪:大勢の人間に対して交渉してこようとする
 幽霊:個人的な因果関係で祟りを受ける

③妖怪:夕暮れ時、あるいは明け方時
 幽霊:丑三つ時(今でいう午前二時~二時三十分)

 宮田は『妖怪の民俗学』の中で産女、磯女、雪女などの妖怪や、それにまつわる伝承を検討し、『都市空間の怪異』では妖怪と幽霊を区別することが有効ではないということを確認している。

 だがしかし、「幽霊」と「妖怪」の区別を容認し、人を目指し個性をもった、さまよえる霊を「幽霊」、その「幽霊」が個性を失い場所に固執するようになったとき「妖怪」となると考えるにいたっている。

「妖怪の音声」

 宮田は、自然と人間が調和のとれた共生関係を維持していれば、怪異・妖怪現象は生じないという。したがって、怪異・妖怪現象の発生は、その関係が人間側からの壊されたことによって発生したと考える。

 怪異・妖怪現象は自然の側からの「警告」として理解できるとし、現象に伴って発生する怪音や妖怪の声もまた「妖怪からのメッセージ=警告」と把握できるとする。

「都市の怪異」

 近現代の妖怪のフォークロアは、人里離れた闇空間のイメージよりも大都会がしばしば選ばれている。そこには都市民の不安を介在して複雑な人間関係が生み出すフォークロアとしての怪異現象がある。そこで妖怪を都市社会の現代世相の一環としてとらえて、広く日本文化論の次元で分析視点を提示している。

宮田登『都市空間の怪異』の企画案(『都市空間の怪異』に収録されている小松和彦の「解説 宮田登の妖怪論」)より

 『都市空間の怪異』で、宮田は「化け物屋敷」について問題化している。

 近現代の新しい「化け物屋敷」として、「学校」「病院」「オフィスビル」「高層集団団地」等々が、新しく登場したと紹介・考察している。その理由として、宮田はそうした場所が新しい「境界」とみなされるようになったからだとする。

まとめ

 宮田登の妖怪論の限界について、小松和彦は、なぜ都市空間において、なぜそこに怪異が発生するのかを解き明かすには、前「近現代」以前の都市の延長として考えるだけではなく、近現代に固有のものとして考える視点が求められていると指摘しています。

 そうした点を追及し続けるところが、今後の新たな妖怪研究となるのではないかと、思います。

 ちなみにですが、参考文献はこちら~!

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