妖怪について学べる入門書的な本4選
「妖怪についての知識をつけたいけど、妖怪に関する本って分厚いしとっつきにくい・・・。」「オカルトとは区別して、学術的な角度から「妖怪」について学びたい!」そんな方にオススメしたい本を、今回は4冊(実質6冊ですが)厳選してご紹介したいと思います。
香川雅信『図説 日本妖怪史』
出版社:河出書房新社 出版年:2022年
「妖怪」の歴史をわかりやすく、そして詳しくたどった本です。項目は「妖怪の発生」「古代の妖怪」「中世の妖怪」「江戸時代の妖怪Ⅰ」「江戸時代の妖怪Ⅱ」「近代の妖怪」と、過去から今にいたるまで通史して、「妖怪」という存在が今に至るまで、どのように人間の間で理解されてきたのかを概観することができます。
とんでもなく分厚いということもなく、学術書というよりも、ちょっとした図鑑感覚で比較的手軽に読むことができ、とても読みやすくなっています。
ただし、「図説」というだけであって「妖怪」の絵をふんだんに使用しているのですが、「妖怪」が盛んにビジュアル化されるのは江戸時代以降のことであり、古代・中世の妖怪について紹介する中でも江戸時代以降に描かれた絵が取り上げられていた李するので、時代ごとのイメージと混同しないようにする必要があります(なお、これは香川先生ご自身も本著の前書き部分で断りをいれています)。
伊藤慎吾・氷厘亭氷泉「列伝体 妖怪学前史」
出版社:勉誠出版 出版年:2021
「妖怪」を学ぶ上で絶対に避けて通れないのが、そもそもこれまで「妖怪」がどのように研究されてきたのか、ということです。本書は戦前・戦後(前)・戦後(後)の3期に分けて、それぞれの時代において「妖怪」を研究した人々や、妖怪研究の背景を詳しく追っています。
この本の最大の魅力はなんといっても情報量の豊富さです。「妖怪」研究は色々な角度からされていますが、逆に言えば、その流れが非常にとらえにくいです。(これが「妖怪」を学ぶ上で最大の障害となっているかもしれません。)
「妖怪」と一口にいっても、その中身は〈民俗学が扱った民間伝承における妖怪〉であったり、〈芝居や浮世絵における妖怪画像〉であったり、はたまた〈現代において一般的に言われるキャラクター化した妖怪〉であったりするなど、言葉の示す意味は混在しています。そのため、妖怪研究者といっても、「あなたは一体どういう意味での『妖怪』を研究したんですか?」ということになり、妖怪研究者を追えば妖怪研究の変遷がわかる!なんてものじゃないのです。
たくさん脱線してしまいましたが、話を本書の紹介に戻しましょう。説明した通り、まだまだ整備されていない、妖怪研究の変遷ですが、それを追っていく上で、本書はとても良い道しるべとなります。とらえにくい妖怪研究の流れいろいろな角度から分析してまとめてくれています。ぜひとも読んでいただきたい一冊です。
シリーズ「怪異の時空」
出版社:青弓社 出版年:2016年
全3巻のシリーズもので、それぞれ『怪異を歩く』『怪異を魅せる』『怪異とは誰か』です。共著であり、著者は一柳廣考氏、飯倉義之氏、今井秀和氏、峰守ひろかず氏など、名だたる妖怪研究者たちが、縦横無尽にそれぞれの研究分野を語っています。
このシリーズは、「怪異怪談研究会」で文学・宗教学・民俗学などのさまざまな領域を横断して展開した議論を編集した成果論集となっています。その議論の中心はあくまで「怪異」であり、一般的に我々が指す通俗的な「妖怪」に限定はされません。
しかし、論考の内容は堅苦しいものに限りません。題を見て、ちょっと気になったから読んでみる、みたいなかんじで入るとすごく面白く読めます。中には「こんな角度から見つめなおすこともできるんだ!」とか斬新なものもあります。読んでいて刺激的なシリーズ本です。
小松和彦『妖怪学の基礎知識』
出版社:KADOKAWA/角川学芸出版 出版日:2011年
言わずとも知れた妖怪研究の第一人者でもある小松和彦氏が編集した妖怪学の案内書です。本書はそれぞれの専門家達が各自の研究視点に則って執筆した論考を纏めたものです。
専門的な論考はもちろんのこと、中には説話や御伽草子の中の妖怪、幽霊譚、妖怪伝説、妖怪の絵画等、非常に多彩な題材を扱っています。また、妖怪研究自体がいかなるものであるのかを論じた章があり、そもそも妖怪を学ぶとは、一体いかなることなのかを知ることができます。
多岐に渡った分野を網羅しているだけに、この本はかなり分厚いですが、妖怪について真面目に勉強するならば、抑えておくべき一冊です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?「妖怪」を取り扱った本はこのほかにもまだまだたくさんあります。随時感想をまとめ、今後も更新していく予定です。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!
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